Fighting Kouichi!


by m.ko-1
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表示問題2

最近、「アイガモにスズメ、コイやカエル、牛乳、酒、コーヒー……。これらがみんな「農薬」に指定される可能性が出てきた。」と言うニュースが話題になった。

農薬取締法改正で登録されたもの以外は使えなくなったため、農水省と環境省は農家が除草などに利用してきて人畜に無害なものを幅広く「特定農薬」に指定して合法化するため、らしい。

今までどおり使えるんだから問題ない、かと思いきや、農家の人たちは「無農薬」と謳えなくなるため、猛反発しているらしい。

この問題は結構面白い。確かに普通の感覚からすると、工場で化学的に合成した物質やら、抽出した物質は「農薬」だが、コーヒーの出がらしが「農薬」とはちとおかしい感じがする。

だからそのあたりは区別してほしいと言う気もするが、実はそれほど明確に区別できるものでもない。例えば従来から「農薬」といっているものでも、天然物から特定の物質を抽出、精製しているものもあるだろうし、天然物に含まれる物質と同じモノを化学的に合成したり、発酵で生成させるものもあるだろう。
篤農家の場合でも、必ずしもコーヒーの出がらしをそのまま撒くと言うレベルではなく、例えば経験的に特定の植物から抗菌性を持つ有効物質を抽出して撒くとか、あるいは流行のEMのように発酵を利用することもある。
つまり前者と後者の違いは実質的に、工場での大量生産か、庭先での自家生産かの違いしかない場合だってあったわけだが、それでも後者のみが「無農薬」を宣伝できていたわけだ。

つまりは、「無農薬」と言う表示があることで、「農薬」が悪いものであると言う印象を与え、それによって逆に「無農薬」というプレミアムができて、高く売ることができる、と言う構図がある。
もちろん、原理的には同じモノでも「無農薬」をやっている人たちは、大量生産はできないため、ひとつあたりの生産に手間がかかり、結果としておいしいものができるということはあるため、それに対して高い値段を払うことは別に不合理なことではない。
工場で大量生産される茶碗と、手焼きの茶碗では値段が違うのは当然で、それと同じように「無農薬」をやっている人たちが高く売るための「表示」がほしいのもわかる。しかし「農薬」という仮想敵を作りだすのはちょっと違うように思う。

以前も書いたが、「遺伝子組み替えを使用していません」と言う表示には同様の問題がある。つまり、「遺伝子組み替え」という仮想敵を作ることで、「非遺伝子組み替え」にプレミアムがつくのだ。

しかしその「遺伝子組み替え」という仮想敵は「農薬」同様、法律がなにを「遺伝子組み替え」と呼ぶかによって実体が変わってくる。

極端な話をすれば、「遺伝子組み替え」の定義を広義に取れば、すべてのものは「遺伝子組み替え」に含まれてしまう。
また、いわゆる「遺伝子組み替え技術」によって作り出したものを「遺伝子組み替え」と呼べばいいかといえば、実はそうでもない。

たとえば、これまではセルフクローニングのものは「遺伝子組み替え」に含まないことになっていた。ちなみに、セルフクローニングとは、同じ種由来の遺伝子を組み替えることで、例えば、野生のイネから有用遺伝子を取り出して、コシヒカリに入れても、これは「遺伝子組み替えイネ」と表示する必要はなかったのだ。実際には植物ではそのような遺伝子組み替え作物は商品化されていなかったが、微生物ではセルフクローニングの株がアミノ酸発酵などに実際に使われている。

ところが、今度セルフクローニングのものも「遺伝子組み替え」として扱われるようになるらしい。つまり、いままで「遺伝子組み替え」と表示せずに普通に売っていたものが、「遺伝子組み替え」と表示しなくてはならなくなるかもしれない、ということで、突然変異させて遺伝子組み替えと同じ事が起きている株を選んでくるということを、大手企業は始めているらしい。
例えば、におわなっとうは、においの元を作る遺伝子をつぶした納豆菌を使っているが、まずは遺伝子組み替えでターゲットとなる遺伝子をつぶして効果を確認し、次にその遺伝子が突然変異によってつぶれているものを探してきて、商品化しているらしい。(この場合はセルフクローニングの議論以前に自主的にやっていたみたい。)

ちなみに突然変異は放射線や化学物質によって人為的に引き起こすが、それによって出来たものには、今のところ何の表示義務はなく、普通に商品として売られている。

表示の有無によって商品の売上が大きく変わるのだから、企業としては当然の行動ではあるが、それで安全性が上がると言うならともかく、実体は何も変わらないが、表示対策のために膨大なコストを払うというのはなんとも無駄なことだ。そのコストは回りまわって消費者が払うわけだから、消費者が実体を知って、表示に振り回されなくなることが社会的なコストの低減につながる。

うちの会社でも似たようなことをやっている。有用遺伝子が特定されたら、「遺伝子組み替え技術」を使えばすぐに新しいモノを作ることはできるが、それでは売れないので、掛け合わせを繰り返すことによって有用遺伝子の部分だけ組み替わったものを選抜してくる。時間はかなり短縮する技術はあるのだが、かかる労力とコストは「遺伝子組み替え技術」を使うのに比べるとけた違いに大きい。それでもこの方法ならすぐに品種として登録して売り出すことができるため、「遺伝子組み替え」として検査を受けるのに比べれば、ずっとコストは少なく済むし、早く売り出せる。「表示」によってこのような技術の逆転現象が起きてくる。
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by m.ko-1 | 2004-04-21 18:37 | GMO